60歳のイリヤ(ラザル・リストフスキー)は定年間近の鉄道運転士。だが長い現役期間中、事故で28名を死なせてしまったという不名誉な記録を持っていた。そんな彼には19歳になる養子シーマ(ペータル・コラッチ)がいる。イリヤに憧れるシーマは、鉄道運転士を志し訓練中。イリヤは息子に、事故は避けて通れないものだと折に触れて話すが、シーマは人殺しにはなりたくないという恐怖を日々抱き続けていた。一方、イリヤと心理カウンセラーのヤゴダ(ミリャナ・カラノヴィッチ)は、限りなく愛情に近い友情と信頼関係で結ばれているが、それは恋愛とは違ったもので一線を越えることはなかった。イリヤには決して記憶から消せない過去があったのだ……。やがて、運転士の業務についたシーマは、不安を抱き、汗をかき、夜も眠れなくなってくる。1週、2週、3週間と過ぎるが、シーマは無事故を続け、ついにはその緊張感に耐えられなくなる。そんなシーマを見かねたイリヤは自殺志願者の人々を探し出し、高層ビルや橋から飛び降りる代わりに電車に轢かれてほしいと交渉を続けるのだが……。