地方都市の郊外。34歳の良子(安東清子)は画家である夫の正(田中準也)と小学生の息子・宏(杉尾夢)、姑・和子(髙田紀子)と共に暮らしている。一見穏やかに見える日々の生活。だが創作意欲を失った正は、ヤクザまがいの男に自分の描いた贋作を売り、良子と衝突しては殴りつける。疲れ切った良子に追い討ちをかけるように、姑の嫌味が止まることはない。ある夜、化粧をした良子は、弟の圭人(熊谷太志)が店長を務める小さなスナックへと向かう。トラブルメーカーの圭人が抱えた借金を少しでも早く返せるようにと店を手伝う良子は、常連客とのたわいのない会話や、弟と過ごす平穏な時間にかすかな自由を感じていた。うんざりする日々の生活を吹っ切るかのようにカラオケを熱唱する良子。客と盛り上がっていたところに、正から電話がかかってくるが良子は冷たくあしらって切ってしまう。その態度に日頃からスナックでのバイトを快く思っていなかった正は逆上し、店にやってくると外へ逃げ出した良子を捕まえ壮絶な暴行を加える。青アザだらけの良子の体を見て、心配する圭人。数日後、良子はスナックに向かう途中、正のバイク事故を知り病院へかけつけるが、正は帰らぬ人となってしまう。火葬場で圭人から、正の死亡保険金からスナックのオーナーである水野に1000万を支払うと言われ、良子は正の死亡がただの事故でないことを知る。そんななか、正の死は交通事故として処理されるが、和子は息子の死を受け入れられず精神のバランスを崩してしまう。良子が愛を与えながら育てた宏もまた、父の死によって心を閉ざしがちになっていた。悩み、追い詰められた良子は、やがてあることを決断する……。