若くしてその才能を開花させたラ・チャナ（本名：アントニア・サンティアゴ・アマドール）は、18歳で結婚し、やがて出産。夫がマネージャーを務め、フラメンコダンサーの活動を続けた。ダリを魅了し、映画「無責任恋愛作戦」で共演したピーター・セラーズからハリウッドに招かれたものの、封建的なヒターノ（＝ジプシー）社会で女性が自らの意見を言うことは認められず、ハリウッド進出は幻と消えた。その後も人気は衰えることなく、テレビ出演や世界ツアーなど、頂点を極めたラ・チャナだったが、ある日突然、表舞台から姿を消す……。本作は、彼女を取り巻く状況を丁寧に解き明かしていくドキュメンタリー。結婚、出産、キャリア頂点での引退、男性社会で女性が活躍することの難しさ、家庭内暴力、そしてどん底からの復帰と人生を共に歩む運命の相手との出会い、迫りくる老い……。ラ・チャナの人生は困難に満ちたものだったかもしれない。しかし、絶望すら受け入れ、前に進む強さを彼女は教えてくれる。画面から溢れ出さんばかりのパワフルな踊りとチャーミングな人柄、さらに、生み出す言葉の一つ一つが私たちを魅了する。