宮城県雄勝半島、石巻市の漁村・立浜は、東日本大震災の大津波で46軒中1戸だけを残し被災。1年後、その絶望の淵から立ち上がったのは、村に残ることを決めた12人の漁師たちであった。「いっさい、いっさい、海を恨んでいねぇ」と、男たちは生活の再建とともに祭りの復興に乗り出す。600年続く「雄勝法印神楽」は、修験者がもたらしたと伝えられる国指定無形文化財である貴重な文化遺産。流出した一切の神楽面と祭具を作り直し、何もない海辺の居住地跡に柱を立て、舞台を作る。神楽に憑かれて“好き神”を自称する漁師が祈りの神楽を舞い、笛と二人の太鼓打ちが息を合わせ600年前と変わらぬリズムを打つ。産屋の庭は神楽が舞い遊び、笛・太鼓の音が、命の誕生を告げる産声のように響く。海辺に立てられた舞台は新しい命を再生し、力強く鼓動させてくれる産屋となった……。