第一次世界大戦末期のウィーン。表現主義を代表する天才画家エゴン・シーレ(ノア・サーベトラ)は、スペイン風邪の流行によって妻エディットとともに瀕死の床にいた……。時を遡ること、1910年。美術アカデミーを退学したシーレは、同世代の画家仲間と“新芸術集団”を結成、16歳の妹ゲルティ(マレシ・リーグナー)の裸体画で頭角を現していた。そんな時、彼は場末の演芸場でヌードモデルのモア(ラリッサ・アイミー・ブレイドバッハ)と出逢う。褐色の肌を持つエキゾチックな彼女をモデルにした大胆な作品で一躍、脚光を浴びるシーレ。その後、敬愛するグスタフ・クリムトから赤毛のモデル、ヴァリ(ファレリエ・ペヒナー)を紹介されたシーレは、彼女を生涯のミューズとして数多くの名画を発表。幼児性愛者という誹謗中傷を浴びながらも、シーレは時代の寵児へとのし上がっていく。だが第一次世界大戦が勃発、シーレとヴァリの関係も時代の波に飲み込まれていくのだった。ヴァリをモデルに描いた最期の絵。タイトルは『男と乙女』、後に『死と乙女』と改題されるウィーン表現主義の最高傑作のひとつとなったその絵画は、ふたりの稀有な絆を永遠に刻む愛の証であった……。