鹿児島市内の住宅地の一角にある知的障がい者施設・しょうぶ学園。園生が楽器を弾き、叩き、叫ぶパーカッショングループ・otto&orabu、ひたすら布と糸と遊ぶnui project、魅力に溢れた多様なクラフトワーク……。美しい園内にはアトリエのほか、カフェレストラン、ベーカリー、蕎麦屋が点在し、園外からのお客が引きも切らない。障がいを持つ人が好きな手仕事をしながら、叫ぼうが歌おうが一日中ぼんやりしていようが、衝動のすべてを肯定してくれる、彼らがあるがままの自分でいることを許される場所だ。たけしくんは中庭で、来る日も来る日も一本の木の側で、しゃがみこんでどこかを見つめ続けている。カメラをひたすら向け続けても全く気にしない。気持ちのいいカフェテリアでごはんを食べる様子も人それぞれで、誰も自分を人と比べるということがない。刺繍工房では、吉本さんが糸と布と戯れ、部屋中を埋め尽くす。彼には目的もゴールもなく、ただただ布を小さく切り取り、糸を並べて、満ち足りている。紙の上から椅子から机から、床も壁もペンキで四角い升目を描き続ける濱田さんもまた、何年も同じスタイルで毎日毎日升目を描いている。その迷いの無い筆さばきはまるで巨匠のよう。木工所では、みんなトンカントンカン好きなように彫っている。中野くんは笑顔で、ボタンの詰まった箱を来る日も来る日もぐるぐる回し続ける。そんなしょうぶ学園は、福森家の人々によって生み出され、守り支えられてきた。長年彼らに寄り添いながら、常に自分自身のあり方に疑問を抱き続けてきた現在の学園長・福森伸さんは、「僕たちは、彼らに社会の秩序というものを教える立場ではない。彼らから精神的な秩序を学ぶべきだ。やらなければならないことは、彼らが安全に歩ける道をつくることである」と言う。きれいごとでは済まされない福祉事業の運営において学園が取り組んできた活動は、今を生きる我々に様々な問いを投げかけ、改めて自らを見つめ直させる。