ハンフリー・ボガードにとりつかれている映画批評家のアレン(ウディ・アレン)は、この日も名作「カサブランカ」を心ゆくまで楽しんでいた。映画が終わり誰もいなくなった客席で唯ひとりアランはポカンと口をあけて夢想にふけっている。すでに彼の妻ナンシー(スーザン・アンスパック)は、この日日の有り様に慰謝料までもかなぐりすてて彼のもとを去って行った。嘆きのアランを慰めてくれるのは「カサブランカ」の主人公ボガードだった。友人ディック(トニー・ロバーツ)とその女房リンダ(ダイアン・キートン)は彼のために女友達を紹介してくれるが、オドオドした不器用ぶりには誰とて進展しない。リンダはアランを優しく慰めるうちに次第に感情の高まりを覚えるようになる。しかも幻のボガードがここでも出没し、彼を扇動するから始末が悪い。“何といってもリンダは親友の女房なんだ”。アランは罪の意識に襲われてくる。次第にディックも、リンダとの結婚生活が壊れていくのを感じるようになるが、その張本人のアランを疑おうともしない。ディックはひとりやるせない気持ちで仕事のために空港へと向かう。突然リンダは自分が本当に必要としているのはディックであることに気づく。アランにしてみれは2人の間に立ちはだかることはできない。空港に向かうリンダに追いついたアランは、ディックと一緒に行くように勧める。彼のやさしさに、まだ気持ちのゆらぐリンダはうしろ髪をひかれる思いでディックと去って行く。残されたアランの肩にやさしくボガードが手をおく。「お前はもう俺がいなくてもやっていけるぜ」。名作「カサブランカ」のラスト・シーンと同じ、夜霧に包まれた空港で、アランはカッコよく消えて行くのだった。