本作は、おカネのモラルを教えている本人が金銭トラブルに巻き込まれていく皮肉な状況を、緊張感たっぷりに描く人間ドラマである。実際の事件から着想を得て作られたという脚本が巧みであり、事態が悪化していく中で、打つ手が全て裏目に出てしまう時の焦燥感が手に取るように伝わってくる。これが長編デビューとは思えないほど、ふたりの監督は映画におけるリアルなサスペンスのあり方を徹底的に研究しており、観客の心を掴んで離さない。女教師の災難のドラマである一方で、経済に支配される現代社会の矛盾という普遍的要素が底流する物語でもあり、世界のどこでリメイクしても通用する内容である。日常に隣接した出来事の意外な展開をリアリズムで描く手腕に長けた、期待の新人コンビの誕生である。第27回東京国際映画祭コンペティション部門上映作品。