恋愛から結婚生活に入ったヘレンは夫エドワードと子供ジェニーと貧しいながらも平和にに暮らしていたがエドワードがたまたま病に倒れドイツに住むある名医より他にはこの病気を治すことのできる者がないと言われて今はもう、無くなりかけた貯えのみでは如何することも出来ず途方に暮れたが、彼女は意を決し、愛児のため又夫のためキャバレーに唄い女「ブロンド・ヴィナス」となって働き、やっと彼をドイツへ旅立たせ、彼なき留守中健気にも愛児を守りながら彼への仕送りを続けるのであった。ところがこのキャバレーの常連にニックという金持ちの青年があった。彼はヘレンのこうした身の上を知りつつ深く彼女を慕うようになり彼女を通して莫大な金が病めるエドワードに送られた。その中にヘレンもキャバレーをやめてニックの家から程遠からぬ所に静かな家を求め、二人の友情かはここに深められて行くのであった。エドワードは病癒えて勇んで家に帰って来た。しかし何となく感じられる家庭の空気の変化。嫉妬のために冷静さを失った彼は自分と愛児に貞節であったヘレンを追い、その上ジョニーさえも彼女から引離そうとした。母として子に別れるよりはと思い詰めたヘレンはジョニーを抱いてひそかに夫の家を出て、餓と恥を忍びながらあるいはボルチモア、あるいは北のノーフォーク、南はメキシコに近いテキサツの果てまで、あるいは踊り、あるいは物乞にその日の糧を得、流浪する中、夫エドワードから向けられた私立探偵のために所在を知られ逢う逢う子供を奪われる。夫のために見すぼらしい姿になり下ったヘレンは彼にすべての事情を了解して貰おうと力めるが得たものはただ彼の病中に仕送った金が返されたにすぎなかった。かくて心身ともに疲れ果てたヘレンはいづくともなく姿を消した。それから月日はたって行ったがヘレンの消息は絶えてしまった。数年後、パリの劇場に一人の美しい唄い女が現れて一挙に人気を独占した。それがヘレンだった。その盛名を伝え聞いたニューヨークの大劇場は彼女との契約を申し込んできた。ヘレンはこれを機会になつかしい子供ジョニーのいるニューヨークの土を踏んだ。パリで偶然出会ったニックが同行した。ニックの協力によりエドワードを説き伏せてようやくジョニーを訪れれば、母なき子はいじらしくも痩せて汚く哀れである。ヘレンはすべてを忘れて子供を愛撫し、夫は再び昔の平和な三人となった。