パーキントン夫人

「キューリー夫人」及び「ミニヴァー夫人」「塵中の花」と同じくグリア・ガースンとウォルター・ピジョンのチーロが主演する映画で、ルイズ・ブロムフィールドの同名の小説を映画化したもの。脚本はロバート・ソーレンとポリー・ジェームズが協力執筆し、「人生の悦び」「支那海」のテイ・ガーネットが監督、「心の旅路」「フィラデルフィア物語」のジョゼフ・ルッテンバーグが撮影を指揮した。助演は「悪魔の金」のエドワード・アーノルド、「偉大なるアンバーソン家の人々」のアグネス・ムーアヘッド、「ラブ・レター(1945)」のセシル・ケラウェイ及びグラディス・クーパー、「育ち行く年」のトム・ドレイク、新人フランセス・ラファーティ、「不思議な少年」のピーター・ローフォード、「小狐」のダン・デュリエ、タラ・ビレル、セリナ・ロイル、フォーチュニオ・ボナノヴァらである。音楽は「ガス燈」のプロニスラウ・カパーが作曲している。

1872年、ネヴァダ州リーピング・ロックの下宿屋の娘、18歳のスージー・グラハムは、金持のオーガスタス・パーキントン少佐と結婚した。ニューヨークに帰った彼は、以前の恋人コンチ男爵夫人に、スージーに上流夫人としての行儀作法を教えてやってくれと頼まなければならなかった。パーキントン夫妻が3回目の結婚記念日を祝った数日後、彼らはニューヨークの上層社交界の人々を招いて夜会を開いたが、来客は10人ほどしかなく、スージーは屈辱の余り卒倒した。そのために流産した時、少佐は来なかった客の名を調べ復讐を誓った。その後一人の実業家が破産して自殺したが、リヴィングストン夫人と名のる1婦人は、スージーを訪ねて少佐が彼女の夫を破産させるのを、とめてもらいたいと頼んだ。スージーがその婦人の加勢をしたので、少佐は怒って一時別居したが、スージーが正しいことを認め、例の名簿を焼き捨てる。1899年、愛児ハーバートを失って悲しんだスージーは、一人旅に出た。少佐は英国へ行き、サセックスに邸宅を求め、ノラ・エブスワースという美しい婦人とねんごろになる。スージーは突然イギリスに現われエドワードという紳士と親友となる。彼は後にエドワード7世となった。当時のプリンス・オヴ・ウェールズで、ノラをヴィクトリア女王付の女官にすることによって、スージーの立場を救ってくれたのである。パーキントン夫妻は自動車工業にも手をそめたが、少佐は自動車競争で危禍にあって死んだ。それから長い年月がたち、1938年、83歳のスージーはなお壮者をしのぐ元気であった。クリスマスのパーティに集まった親類は、みなスージーの死後の遺産分配の取り前の多からんことを願っている。ろくでなしの無気力な者ばかりなのが、彼女の気に入らなかった。ただジェーンだけはスージーが目をかけている健気な処女で、スージーの娘ヘレンとエモリイ・スチルハムの娘である。ジェーンは祖母を訪ね、父の事務所に勤務している青年ネッド・タルボットと、南アフリカへ駆け落ちする決心であると告げる。それはスチルハムが背任横領で裁かれるはずで、ネッドが彼に不利な証言をしなければならない立場であるから、それを避けたかったわけであった。スージーは親族会議を催して、スチルハムの窮境を救うべきか否かを相談した。スージーは救う気であったが、そのためには3100万ドルの全財産を投出さねばならぬと判ると、一同は反対した。スチルハムは自首すべく立ち去った。スージーはジェーンとネッドの心底を見極め、二人の愛が真実であることを知ると、スチルハムを救うと宣言する。もはや遺産をもらうあてのなくなった親類一同は、がっかりしてパーキントン邸を去った。スージーは故郷リーピング・ロックへ帰ろうと、仕度を始めるのであった。