ボスニア=ヘルツェゴヴィナで暮らすロマの家族、ナジフとその妻セナダ、二人の娘たちは慎ましいながらも幸せな生活を送っていた。ナジフは拾った鉄くずを売って一家の生計を支え、セナダは3人目の子をお腹に身ごもっている。そんなある日、ナジフが一日の長い労働から帰ると、セナダが強い腹痛を訴え、横になっていた。翌日ナジフは車を借りて、いちばん近い病院にセナダを連れて行く。診断によると、セナダは流産、5か月の胎児は腹の中で死んでいるという。セナダの命に関わる状態なので、遠い町の病院ですぐにでも手術を受けなくてはならない。だが、セナダは保険証を持っていないので、病院は980ボスニア・マルク(500ユーロ)の支払いを要求する。貧しい鉄くず拾いには、ひと財産だ。結局ナジフの懇願にもかかわらず、セナダは手術をしてもらえず、ボスニア=ヘルツェゴヴィナ中央のロマ人地区に帰るしかなかった。ナジフはセナダの命を救うため、死にもの狂いで鉄くずを探し、国の組織に助けを求めるのだが……。