1810年。皇帝ナポレオンの命を受けたフランス軍は、マッセナ元帥(メルヴィル・プポー)指揮の下、ポルトガルの征服を開始。9月27日。激戦の末、イギリス・ポルトガル連合軍は、イギリス軍を率いるウェリントン将軍(ジョン・マルコヴィッチ)の戦略によってフランス軍を撃退する。だが、勝利にもかかわらず、イギリス軍は要塞トレス線へ撤退。それは、数の上で有利なフランス軍を誘い込むための行動だった。リスボンの手前に建設されたトレス線は、ウェリントンが1年前から密かに準備を進めていた80kmにも及ぶ防衛のための砦であった。暴虐の限りを尽くし、ポルトガル市民の憎しみを買ったフランス軍は、十分な食料や装備を得られず、立て直しのためにコインブラへ向かう。そこでマッセナ元帥は、友好的なレオポルド(ミシェル・ピコリ)、セヴリーナ(カトリーヌ・ドヌーヴ)、コジマ(イサベル・ユベール)らの歓待を受けるが、フランス軍に娘を殺されたセヴリーナは、途中で席を立つ。ポルトガル軍のフランシスコ軍曹(ヌヌ・ロプス)は、戦死した同僚の新妻モーリーン(ジェマイマ・ウェスト)を気遣ううち、いつしか惹かれてゆく。負傷したポルトガル軍中尉アレンカル(カルロト・コッタ)は、フランス軍から逃れると、気丈な未亡人フィリパ(マリサ・パレデス)の手を借りて、トレス線を目指して旅立つ。そしてイギリス軍。持久戦を得意とするウェリントンの作戦は大成功。危害を加えない兵団は市民からの支持を得たばかりでなく、フランス軍のような飢餓もなく、兵士たちは黙々とトレス線への軍行を続ける。その様子に満足気なウェリントンが見つめていたのは、遥か先のことだった……。愛、憎しみ、復讐、裏切り、忠誠心。様々な動機から戦争に飛び込む者たち。激動の時代を生き抜く女性たち。懸命に生きようともがく市井の人々。それぞれの運命が、最後の砦トレス線で決しようとしていた……。