出来心から麻薬の密売に手を出した48歳のトラック運転手アラン(ヴァンサン・ランドン)が、刑務所から出所してきた。彼は、折り合いが悪い母イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)の家に身を寄せて、人生の再出発をはかろうとする。しかし思うような職を得ることはできず、なんとかありついたのは、塵処理仕分けの仕事だった。イヴェットはそんな息子を黙って受け入れているが、実は脳腫瘍の悪化で余命いくばくもないことを宣告されていた。イヴェットは、いい年をしてまともな暮らしもできない息子に苛立ちを募らせる。一方アランも、神経質で小煩い母を疎ましく思っていた。ある日、アランはボーリング場でクレメンス(エマニュエル・セニエ)という女性と出会い、一夜を共にする。しかし、2度目のデートで職業を尋ねられて口ごもり、気まずいまま別れる。そんなふがいない自分に腹を立てたアランは、仕事を辞めてしまう。それにイヴェットは怒りを爆発させる。大げんかの末にアランは家を飛び出し、イヴェットとも仲の良い隣人ラルエット(オリヴィエ・ペリエ)を頼る。ラルエットはアランに、何日でもいていいが、母親の気持ちを考えるよう話す。含みのある彼の言葉には、イヴェットのただならぬ決意が隠されていた。ある日、アランは母親の薬が入った引き出しで書類を見つける。それはスイスにある自殺を幇助する協会との契約書だった。イヴェットは、病気が進行し、自分が自分でなくなる前に、“自分らしい人生の終え方”を望んでいるのだ。それを知ったアランは激しく動揺する。母の主治医に会い、病状を理解したアランは、スイスの協会の人との話し合いにも同席し、母の決意の固さを知る。残された時間を共にし、やっと向き合うことのできた母を、アランは無言で労わる。そして、イヴェットが旅立つ日の朝を迎える……。