1936年、中国。北の八卦掌の宗師《グランド・マスター》、ゴン・パオセンは引退を決意、跡継ぎに一番弟子のマーサン(マックス・チャン)を指名する。パオセンは南の佛山で引退試合を開き、自分に勝った“真のグランド・マスター”に、自分がやり残した南北統一の使命を任せようとするが、野望を抱くマーサンは南の各流派を潰しにかかり、怒ったパオセンに佛山から追い払われる。パオセンの娘で、奥義六十四手をただ一人受け継ぐゴン・ルオメイ(チャン・ツィイー)も、父の反対を押して名乗りを上げ試合に勝つことしか頭になかった。一方、南の武術界からは詠春拳の宗師・イップ・マン(トニー・レオン)が送りこまれる。7歳で詠春拳の門下に入った彼は三代目宗師を引き継ぎ、妻と二人の子供と共に満ち足りた暮らしを送っていた。闘いの舞台は、佛山で最も有名な娼館“金楼”。イップ・マンはまずここで働く様々な流派の武術家たちと闘うことになる。八掛掌、形意拳、洪家拳の使い手である武術家たちを倒したイップ・マンに、パオセンは「あなたに後を託そう」と高らかに宣言。だがルオメイは父に黙ってイップ・マンを金楼に呼び出し、奥義六十四手を見事に決めて勝利する。しかしその時、同じ高みを目指す二人の間に何かが芽生える。雪に包まれた地から手紙を送るルオメイの胸には、熾烈な闘いで交わした視線と重なる呼吸が甘く切なく甦るのだった。1937年、日中戦争勃発。1938年10月には日本軍が佛山に侵攻、イップ・マン邸は憲兵隊に奪われる。日本軍への協力を拒否したイップ・マンは貧窮に苦しみ、さらには幼い娘の餓死という最大の悲劇が彼を襲う。一方、ルオメイは列車の中で、日本軍に追われる八極拳の宗師・カミソリ(チャン・チェン)を助ける。彼は中国国民党の特務機関に属し、暗殺者として恐れられる男だった。そんな中、マーサンは日本側につき、1940年に満洲国奉天の協和会長に就任。マーサンの人格を問題視するパオセンは、跡継ぎを破棄、逆上したマーサンは師匠を殺害する。ルオメイは秘めていたイップ・マンへの想いを封印し、ただひたすら復讐に向かって技を磨くのだった……。1950年、香港。宗師たちはそれぞれの事情でこの街に流れてきていた。イップ・マンは武術を教え、多くの弟子たちから慕われている。カミソリは、激烈な闘いを制して組織から脱退、その後八極拳を弟子に伝えた。そんなある日、診療所を開くルオメイを訪ねたイップ・マンは、10年前の大晦日の復讐劇を知る……。