ニューヨーク・タイムズ紙で長年ファッション・コラム『ON THE STREET』や社交コラム『EVENING HOURS』を担当しているファッション・フォトグラファー、ビル・カニンガム。50年以上もニューヨークの街角に出てファッショントレンドを追い続け、ストリートファッション・スナップの元祖とも言える彼に撮られることは、ニューヨーカーにとっては誇りである。82歳になる彼は今でもブルーの作業着姿で街角に自転車に乗って現れ写真を撮り、夜にはチャリティーパーティーやイベントに顔を出し、さらにパリのファッション・ウィークに出向くなど、仕事に情熱を燃やし続ける。客観性を保つためにパーティーでは水すら口にしないというほど、仕事に対する姿勢はストイックであり、世界中のファッション・ピープルが尊敬する存在である。その一方で、彼が雨の日に着るポンチョはテープで補強され、彼の住むカーネギーホールの上のスタジオアパートの小さな部屋は、今まで撮影した全ネガフィルムが入ったキャビネットのほかは、簡易ベッドが置いてあるのみ。コーヒーは安いほどおいしいと主張するなど質素な生活を送り、仕事以外には無頓着なところがある。2008年、ビル・カニンガムはフランス文化省から芸術文化勲章オフィシエを受勲される。そのときに催されたパーティーで、彼は「私のしていることは仕事ではなく喜び」と語る。仕事をこよなく愛するビル・カニンガムの姿をカメラは追う。