映画館の強盗に入って捕えられたエディ・チャップマン(クリストファー・プラマー)がフランスの海岸に近いイギリス領のジャージー島にある刑務所へぶちこまれたのは、第2次大戦が始まったばかりのころだ。やがてその島がイギリス軍に占領された。ある日彼は思いがけなく、美しいドイツの伯爵夫人(ロミー・シュナイダー)とスタインハーガー大佐(ゲルト・フレーベ)の訪問を受け、即時釈放と交換条件にドイツ秘密情報部のために働いてくれと頼まれた。自由欲しさにエディがそれを引き受けたのは言うまでもない。早速彼はフランスの捕虜収容所へ捕虜の1人をよそおって送りこまれた。その中にはレジスタンスの女闘士ポーレット(クローディーヌ・オージェ)がいた。やがてエディはドイツ兵フィリップ・グローマンになりすまして収容所を出た。ポーレットが釈放されたのはすぐそのあとである。それはレジスタンスの仲間にエディの死を報告させるためのドイツ側の策略だった。エディはバロン・フォン・グルーネン(ユル・ブリンナー)のもとで職業スパイとなるための訓練を受けた。それが終わってエディが命じられたのはパラシュートによるイギリス降下であった。イギリス情報部へ直行したエディは自分が手に入れたドイツ軍の電信略号ナンバーを交換に釈放を申し出たが、結局はほとんど脅迫的にイギリス側のスパイになることを承諾させられてしまった。こうしてエディは2重スパイを演ずることになった。ドイツ側はこれを見破れず将軍自ら勲功章を彼に与える始末であった。パリに出た彼は相変わらずレジスタンス運動に従事しているポーレットに会い、この組織でも彼は目ざましい活躍を示した。再びドイツ軍から呼び出され、イギリス攻撃協力を命ぜられたが、彼はイギリス側の被害を最少限に食い止めることに成功した。1945年5月8日、ヨーロッパ戦線での連合軍の勝利を祝う日である。お祭り気分に浮かれる人々をよそに、エディは落ち着かなかった。彼の目はカウンターの奥にある金庫に注がれていた。