19、20世紀の交。ミズリーの田舎から姉を頼って働きに出たキャリー・ミーバー(ジェニファー・ジョーンズ)は、たちまち衣食の道を失って汽車の中で知り合ったセールスマンのドルーエ(エディ・アルバート)の援助に頼らなければならなくなった。ドルーエは彼女を彼のアパートに引き入れ、結婚を口実に同棲を始めたが、むろんその意志はなかった。シカゴ一流の料理店フィッツジェラルドで支配人をつとめるジョージ・ハーストウッド(ローレンス・オリヴィエ)はドルーエのなかだちでキャリーに会い、冷酷強欲な妻(ミリアム・ホプキンス)では満たされない温かさをこの田舎娘に感じた。2人は、旅がちのドルーエの目を盗んで逢瀬を増し話はついに結婚にまで進んだ。ジョージは妻に離婚を要求してキャリーと新しい生活に旅立とうとしたが、むろん妻は許さず、彼は逆上のあまり店の主人の現金を握ったままキャリーを拉してニューヨークに奔った。これより前ジョージに妻のあることを知ったキャリーは一時烈しい絶望におちいったのだがもはや彼女も自分の情熱に抗する術はなかったのである。ニューヨークの2人は幸福だった。しかしやがて主人の金の件がこじれ、ジョージはあらゆる料理店から職を失った。しかも妻と正式離婚をするためには故郷の全財産も捨てねばならず、かくて彼は全くの無一文になり下がった。キャリーはジョージの子を流産した後、女優となって生活をたてる一方、ジョージをシカゴの息子と会わせようと図った。出かけたジョージはみすぼらしい自分を息子の前にさらす気になれず、ニューヨークに帰ってくると、キャリーは置き手紙と共に家を去っていた。数年間、ジョージは公共の保護を受ける乞食にまでなり下がり、一方キャリーは華やかなスターとなって売り出した。ある夜、彼女の楽屋口に、一飯の恵を乞うジョージが現れた。キャリーは、彼女のためにこれほどの打撃をこうむった男を見て、2度と離れまいと誓ったが――しかしジョージは彼女のすきにテーブルから小銭を1つ取り上げると、何一言いい残さずに静かに楽屋を立ち去った。