20世紀前半のドイツのある都市。主人公ハリー・ハラー(マックス・フォン・シドー)は、巷に生活しながら、深く神話的な世界に身を沈め、世間とのつきあいは最少限という厭世生活を送っている。自分では常に荒野をさまよっている狼のように、内部が分裂しているのを感じていた。いつものように町を歩いていたハリーは、<狂人のみ入場可>と書かれた文字にひかれて中に入る。そこは魔術劇場で、パンフレットを渡された。自分が異常でないことに自信をもったハリーは、以前より大胆にカフェやレストランに出入りするようになった。両性具有の謎めいた女ヘルミーネ(ドミニク・サンダ)と知りあったのはそんな時に行った店の1軒でだった。ハリーは彼女にひかれるものを感じた。2人は何度かカフェで会うが、ヘル・ミーネの心はハリーには読めず、ハリーは次第に乱れていった。彼女から様ざまな人間を紹介される。ある夜、ハリーは彼女を家に誘うがベッドにいたのはマリア(カルラ・ロマネッリ)だった。彼はマリアとの幸福な時を過ごすがそれもつかの間に終わった。やがて町を歩いていたハリーは、再びいつかのような文字を目にした。魔術劇場。スタッフは皆見覚えのある人々だった。ハリーの頭に洪水のようにイメージが湧くのだった……。