第ニ次大戦下のロンドン--小説家モーリス・ベンドリックス(ヴァン・ジョンソン)は、作品の材料探しに官吏のヘンリイ・マイルズ(ピーター・カッシング)とその妻セラ(デボラ・カー)と知り合い、彼女から夫の日常をきき出すうち2人は烈しい恋に陥った。しかし夫の前では平然とし、離婚のことを考えようともしない彼女をみては、ベンドリックスの心は嫉妬と疑惑についとげとげしくなるばかりであった。ヘンリイの出張で、2人が男の部屋で数日暮らせるという初めての夜、ナチのV1爆撃が開始された。地下室へ避難する用意でベンドリックスが階下へ降りた途端、至近弾が扉を吹き飛して彼はその下敷となった。やっと部屋に戻った彼を、セラは苦悩の表情でみつめ、逃げるように去って行った。彼女は自分の死を望んだにちがいない--ベンドリックスの気持ちは彼女とその夫に対する憎悪に変わった。戦後ある雨の夜、ベンドリックスは街でヘンリイに巡り合い、彼が外出がちの妻の日常に烈しい不安を感じていることを知って、秘かに彼女の行動を私立探偵に探らせる決意をかためた。パーキス(ジョン・ミルズ)という律儀な探偵は子供連れでベンドリックスのためにつくしてくれたが、その結果、彼女がスマイス(マイケル・グッドリーフ)という反キリスト主義者の家に出入りし、且つ変わらずベンドリックスを想いつづけていることが明るみに出た。しかし、勢いを得たベンドリックスがヘンリイにすべてをぶちまけた夜、セラは夫に2度と別れない誓いをたてた。パーキスが探し出した彼女の日記によると、爆撃の夜、彼女は男が死んだものと思いこんで、特に信じてもいなかった神に彼を生き返して下されば2度と彼に会いません、と誓ったのだった。その直後生き返って来た彼を見て、彼女は神の摂理のきびしさに抵抗し、脅かされながらも誓いに忠実に彼を避け通して来たのだ。日記を読んでベンドリックスは直ちに病床のセラに電話したが、2つの誓いを侵してまでも彼の胸へ走りかねない恐ろしさに、彼女は雨の中を教会へ逃げて神にすがった。この雨が彼女の命を奪った。臨終の床から呆然とアパートへ戻って来たベンドリックスの足許に、愛の極みで神の存在を認めざるを得なくなった女の最後の決別の手紙が落ちていた。