紐育のウィンコートという古い銀行が破産した。その銀行の若主人ジョン・ウィンコートは何とかして銀行を整理して取引者に迷惑をかけまいと心を痛めていたのであったが、一方同銀行共同経営者ブランコは銀行休業の通知を知り驚きの余り死んでしまった。ジョン・ウィンコートはその後、銀行の整理を弁護士に託し、過労を苦悶とから逃れるために世界漫遊の遊覧船に乗り込んだ。この時、ブランコの娘マリア・ブランコは父の急死の原因となったウィンコート銀行休業事件を恨む余りその若主人ジョンに対して復讐をくわだて、実兄の承諾を得てジョン・ウィンコートの乗り込んだ遊覧船へと同乗するのであった。航海中マリアはウィンコートが自分を愛する様に全力を尽くした。そしてついにはウィンコートから結婚の申し込みをする様に迄もなり、二人は船中に於いて結婚式を挙げることに話は進んだのであったが、折柄の暴風雨に船は暗礁に乗り上げた。船客及び乗組員はボートに乗り避難したが、マリアとウィンコートとは偶然にも船中に取り残された。ウィンコートはマリアが充分に己を愛しているものと思い込んでいたのであったが、計らずもマリアが偽りの愛情をもってウィンコートを操り、彼を翻弄しているのを知った。彼はマリアが亡父の復讐に燃ゆるブランコの娘である事を知った。然しウィンコートはマリアを深く愛するの余り、純情をもって彼女に対し、難破船中、及び海賊船中に起これる幾多の難関をも彼女を愛し、彼女の為に戦い続けて、結局は偽りの愛情を以て彼に望んだマリアをして、真実の愛情を己にと捧げさせるようにせしめ得た。