1962年にアメリカの作家兼海洋学者のレイチェル・カーソンが著した『沈黙の春』は、当時隆盛を誇った農薬の危険性を予言し、DDT禁止のきっかけを作った。だが同じ頃、ベトナム戦争真っ最中のベトナムでは、ジャングルに潜むゲリラを殲滅するため、米軍による枯葉剤散布が始まっていた。農薬と同じ成分からなる枯葉剤についてアメリカ政府は、“人体には影響なく、土壌も 1年で回復する”と説明し、400万人ものベトナムの人びとにも直接散布された。だが実際は、その中に人体や自然環境に多大な影響を及ぼす猛毒ダイオキシンが含まれていた。戦後 35年を経たいまも続くその被害。当時ベトナムに駐留していた米軍兵士も枯葉剤を浴び、帰還兵の多くがいまだに苦しんでいる。そして、被害は彼らだけでなく、子や孫の世代にまで及んでいた。帰還兵の娘、ヘザーは片足と指が欠損して生まれた。父の戦場だったベトナムを訪ねたヘザーは、両国の被害者が繋がっていくことの大切さに気づく。本作は、枯葉剤の刻印を背負ったベトナム・アメリカ、双方の子供たちの困難と勇気を描き、レイチェル・カーソンの予言的言葉に再び耳を傾けることの大切さを訴える。