1960年代、“子どものための哲学” という研究がコロンビア大学教授マシュー・リップマンによって発表された。子供が元々持っている“考える力”を話し合う事でさらに高め、その後の認知力と学習力、生きる知恵へと繋がってゆくということを提唱したのだ。その考えに基づいて2007年、フランスのとある幼稚園で世界初の試みが始まった。パリ近郊のZEP(教育優先地区)にあるジャック・プレヴェール幼稚園。そこで、3歳からの2年間の幼稚園生活に哲学の授業を設けたのだ。幼児クラスを受け持つパスカリーヌ先生は月に数回、ろうそくに火を灯し、子どもたちを集める。みんなで輪になって座り、子どもたちは生き生きと屈託なく、時におかしく、時に残酷な言葉を発しながら様々なテーマについて考える。“愛ってなに?”、“自由ってどういうこと?”、“大人はなんでもできるの?”などなど…。時には睡魔に襲われつつも、考えて話し合っていくうちに湧いてくる“言葉たち”。お互いの言葉に刺激を受け、意見は違っても他人の話に耳を傾けることを学び、自分たちの力で考える力を身につけてゆく。男女関係や貧富の差、人種の問題など、フランスならではの社会的テーマを語りあう子どもたち。試行錯誤しながらもこの画期的な試みに取り組んでゆく教師。そして、子どもたちとともに成長する家庭。そのすべてを通して、“人生を豊かに生きる力”、“子どもの無限の可能性”の大切さに改めて気づかされる。日本の教育現場でも議論になっている“考える力”とは?子どもたちに本当に必要なものとは何なのか? 新たな試みによる子どもたちの変化、成長、可能性、そして未来の教育を見守るドキュメンタリーが誕生した。