2003年、フセイン政権の崩壊から3週間後のイラク北部クルド人地区。戦地に出向いたまま息子が戻らない年老いた母親は、12歳の孫アーメッド(ヤッセル・タリーブ)を連れ、息子を探す旅に出る。生後間もなかったため父親の顔さえ知らないアーメッドにとって、親子を繋ぐのは父親が残した縦笛だけだった。祖母とアーメッドはわずかな現金を持って、ヒッチハイクをしながらバスを乗り継ぎ、砂漠を旅していく。クルド語しか話せない祖母を、アーメッドが片言のアラビア語で助ける。2人は、気のいいトラックの運転手、貧しくとも逞しい路上生活の少年、クルド人殺戮に加担し心に傷を負った元兵士らとの出会いと別れを繰り返す。過酷なイラクの現状に押しつぶされそうになりながら、空中庭園の伝説で知られる古都バビロンを目指し、900キロの旅路を行く。そして2人に、運命の瞬間が訪れる。