21歳でクリスチャン・ディオールの後継者に抜擢されてから50年もの間、独創的かつエレガントなスタイルで世界の賞賛を浴び、ファッション界の頂点に君臨し続けた偉大なデザイナー、イヴ・サンローラン。彼はなぜ長い間、創造を続けられたのか。“人生でもっとも大切なことは自分自身と出会うこと”と引退表明で語ったサンローラン。ファッションで世界の女性に自由と美しさを与えてくれたデザイナーの50年は、コレクションに対するプレッシャー、マスコミや人々の評価、ファッション業界内の競争の連続だった。そしてそれはサンローランの繊細すぎる神経を時に破壊するものでもあった。常に孤独を抱えた天才を見守り続けたのは、公私共にパートナーとして有名なピエール・ベルジェ。富、名誉、成功を手にした2人が歩んだ半世紀は、友人やフランスという国の愛に支えられた年月でもあった。本作では、10万点以上に上る写真や映像などの貴重なアーカイブ素材からサンローランの肉声などを多数初公開。その中には、2009年パリで行なわれたオークションのために2人の美の追求の結晶である骨董品や美術品が自室や別荘から運びだされる映像、1998年サッカーフランスワールドカップのセレモニーでスタジアムに“イヴ・サンローラン”の作品を身にまとった300人のモデルが登場する壮大な映像なども盛り込まれている。貴重な映像とともに、“イヴ・サンローラン”が世界的ブランドとなっていく背景と、名誉や栄光の裏に隠された愛と苦悩がベルジェや友人たちによって静かに語られる。