18世紀末、第22代王・正祖の下で朝鮮ルネッサンスが花開いた時代。4代続く宮廷絵師の家系で、跡継ぎとしてその将来を嘱望されていたシン・ユンボクがある日突然、自ら命を絶つ。実は、誰にも内緒で“ユンボクの絵”を描いていたのは7歳の妹だったのだ。驚きつつも“女の分際で絵師の真似事をしたお前のせいで跡継ぎを失った”と妹を責める父。女人禁制の宮廷に仕えてきた一家の名誉を守るため、幼い妹はその日から兄に代わって“シン・ユンボク”として生きることとなる。宮廷に入ったユンボク(キム・ミンソン)は、名絵師キム・ホンド(キム・ヨンホ)の下で天才的な才能を次々と開花させてゆく。中でも、王命を受けて描く風俗画は、その斬新さで師であるホンドさえ驚くような腕前を見せる。さらに、女性を中心に据え、その裸体さえも大胆に描き込むという、それまで誰も描いたことのない手法を披露。これは、宮廷から低俗と糾弾されることもしばしばだったが、それでもユンボクの筆は勢いを増すばかり。もはや何人にも止められない境地にまで至っていた。そんなある日、ユンボクはガンム(キム・ナムギル)という鏡職人と出会う。ガンムに女であることを知られて恋に落ち、一気に女である自分に目覚めてゆくユンボク。彼女の中で初めて、自分が築き上げた全てを犠牲にしてでも、1人の女として愛を貫きたいという気持ちが芽生える。狂おしい思いは絵筆から溢れ、それを見たホンドは愛弟子の秘密に気付いてしまう。ユンボクをめぐって吹き荒れる愛と嫉妬の嵐は、やがて予期せぬ結末へと3人を導いていく……。朝鮮初のエロチシズムを描いた名画“美人図”。謎の天才絵師シン・ユンボクは、あの日のガンムに答えていたのかもしれない。