1960年6月に日米安全保障条約が岸信介政権下で自動更新されるまでの一ヶ月間、国会周辺は安保に反対する市民のデモであふれ返った。1945年の敗戦からわずか15年の時代。学生、労働者、主婦など様々な立場の人が参加したこの運動を一つにした最大の理由は“2度と戦争をしたくない”という市民の強い意志だった。日本で生まれ育ったアメリカ人のリンダ・ホーグランドは、海外の映画祭に日本映画を出品する際の通訳や、英語字幕作成者として活動してきた。仕事を通して日本映画を深く知るにつれ、彼女は1960年の安保闘争が当時を経験した映画監督たちに大きなトラウマを残していることに気づく。さらに、当時のアーティストたちが絵画や写真を通して安保問題、米軍基地問題を表現し、市民による抵抗の歴史がある事を知った。これらの経験がホーグランドを動かし、この映画の制作に至る。60年安保闘争とは何だったのか。人々を反対運動に掻き立てたのは何だったのか。そして、その後遺症として未だに日本に残る米軍基地が日本にどういう影響を及ぼしているのか。それらを映画という形で伝えようという試みである。