始まりは2004年。コンゴを愛する2人のフランス人映像作家がある日、キンシャサの路上で、車椅子4人と松葉杖1人を含むバンド“スタッフ・ベンダ・ビリリ”の音楽を偶然耳にしたことからすべては始まった。戦争による混乱と貧困でカオスとなったキンシャサで、障害を持ち、家の代わりに動物園で眠り、演奏する。そこはまるで世界のドン底だったが、彼らの音楽は豊かに輝き、メンバーはどこまでも前向きだった。ビリリに魅了された2人は、彼らのアルバムとドキュメンタリー映画の制作を決意。それから5年。数々の困難や挫折を乗り越え、09年にアルバムが世界発売。その数カ月後には、大々的なヨーロッパツアーも実現。彼らの音楽とパフォーマンスは、出会った人すべてに感動を呼び起こす。それはまさしく奇跡だった。映画は09年夏の成功までを描く。“ベンダ・ビリリ”。それはリンガラ語で、“外側を剥ぎ取れ”という意味。障害はあろうとも魂は自由なのだ。外側ではなく内面を見よ!彼らの音楽が、彼らの生き方を伝える強いメッセージがここにある。これは音楽映画ではない。コンゴ社会、ひいてはアフリカ全体の社会的な状況の中で、外側に追いやられ、貧しさに喘ぎ、路上で暮らしている何百万人もの人々のための映画なのだ。それと同時に父と息子の物語でもある。ビリリは、ストリート・チルドレンたちの親代わり。中でも“パパ・リッキー”と慕われるリーダーと、彼が路上で拾い上げた音楽の天才ロジェとの絆は共感を呼ぶ。スタッフ・ベンダ・ビリリは、その歌詞でも歌っているように、“ストリートに暮らす人々のスポークスマン”。そしてそれは、決して諦めない、という勇気と希望の物語なのだ。