2009年6月25日、1人の偉大なミュージシャンが亡くなった。マイケル・ジャクソン。その死後も、世界中に与える影響力は計り知れない。数多くの映像や活字が、今なお彼の足跡を辿り、功績を讃えている。だが、そこで目にするのは、イメージばかりが増幅された偶像としてのポップスターの姿。“メディアが取り上げる自分は本当の自分ではない”と語っていた、晩年の彼の苦悩を消し去るものではない。この作品は、彼が最も信頼するマネージャーに依頼して撮影された貴重なフィルムだ。そこには、かつて見せたことのない素顔が収められている。カメラが捉えるのは彼の私生活。監督のオーダーに応じて、ピンマイクを付けて収録された日常会話の数々。故郷を訪れ、周囲の人たちと触れ合う優しい表情や、親しい仲間に囲まれたバースデイ・パーティーで、生クリームを塗られておどける生き生きとした笑顔。彼の住居であり理想郷である“ネバーランド”の様子を捉えた貴重な映像からは、生涯失うことのなかった彼の純粋さを改めて感じることができる。周囲の好奇の視線にさらされていた時も、彼はいつものように微笑み、みんなを心から愛していたのだ。カメラを通じて、マイケルが私たちに伝えたかったこと。それは、彼も1人の人間であり、常にみんなの親愛なる友人だったということ。その切実なメッセージが、大きな悲しみを乗り越えて観客一人一人のもとに届く。