老人ホーム「浴陽荘」。そこには植物学者の牧草太郎(原田芳雄)を始め、物理学者(真実一路)、役者(川津祐介)、自称映画女優(三條美紀)、バーのママ(絵沢萌子)、板前(中沢青六)、質屋(牧口元美)、ピーナッツ老人(野呂圭介)、小町婆さん(松原智恵子)など、多くの孤独な老人が介護士長(松坂慶子)たち職員とともに暮らしている。老人たちは人生を邂逅し、尽きせぬ想いと死への恐れに打ち震えながら、それぞれが作り上げた物語の登場人物を演じることで嘘とも真実ともつかない奇妙で不思議な日々を送っていた。牧は人生の大半を植物学の研究に費やし、遊びも酒も女も俗世間の全てを顧みずに生きてきた。そうして迎えた80歳の誕生日。彼は、職員の青年と自然薯を堀りに出かける。その折、青年がついた些細な嘘によって小さな泉に辿り着いた牧は、黄金色に光り輝く妖しい花を見つける。それは、彼が長年探し求めていたヒマラヤ聖女の傍らに咲くという不老不死の花“黄金花”であった。その日を境に、植物学に没頭するためにあえて封印したはずの青年時代の記憶の断片が、牧の中に大きな渦となって押し寄せてくる。留学生ユリアーナ(シャノー・ユリアーナ)への切ない思いと永遠の別れ、戦後の混乱、植物学への情熱と挫折……。混乱と夢幻のなか、牧は易者老人(飯島大介)の死に立会い、その夜、誘われるように時の川を遡り、人生最期の旅に出るのだった……。