植物学者・牧野富太郎を敬愛し、穂高の自然を描いて、2007年秋に逝去した映像作家の渡辺哲也。渡辺は1947年岐阜に生まれ、中学、高校時代は生物部植物班に所属した。東京造形大学美術科を卒業後、映像の世界に足を踏み入れる。1983年、渡辺は熱帯林業を扱った国際協力事業団の映像制作をする。それをきっかけに自然への関心が再燃し、植物園や博物館の展示映像をはじめ、植物を中心とした自然の記録映像を手掛けるようになる。代表作は、「生命と言葉の狭間で~牧野富太郎と牧野日本植物図鑑~」、「四季 穂高」など。その渡辺の旧友でもあるドキュメンタリー作家の伊勢真一が、残っている渡辺を映した映像で、彼との想い出を振り返る。それは、二輪草の白い花に夫婦愛を添えた、詩情あふれるレクイエムである。