2007年、中国四川省・成都。巨大国営工場“420工場”が今50年あまりにわたる歴史に幕を閉じようとしている。工場内のホールでは、跡地を土地開発企業に引き渡す式典が行なわれていた。かつてこの工場で働いていた労働者たちが、それぞれの思い出を語る……。1958年。21歳のダーリー(リュイ・リーピン)は、夫と子供と共に故郷を離れ成都に船で向かっていた。長江を遡り、三峡の街・奉節で船はいったん停泊。ダーリーたちは下船し、街を歩くが、出航の時間が近づいた時、子供を見失ったことに気付く。ダーリーと夫は子供を捜そうとするが、汽笛が鳴り、同僚たちによって船に引き戻される。当時、工場は軍事管理下にあり、汽笛の音は軍隊のラッパと同じ意味を持つ絶対の命令だった。船はゆっくりと岸を離れていった……。1982年。ソン(チェン・ジェンビン)は16歳で恋をした。彼女は医大に合格。ソンも受験を希望するが、父親の職を継がせたかった家族に反対され工場に残った。だが、軍需品の需要が多かったベトナムとの戦争が終わると、工場も数年で不景気に。彼女の家族が交際を反対し始めたのはその頃だ。ソンが自ら別れを切り出した当時、彼女が山口百恵の髪型を真似ていたことを憶えている……。1978年に上海からやってきたシャオホァ(ジョアン・チェン)は、その美しい顔立ちから男性たちに職場の花と呼ばれていた。彼女は工場の大学の先生と交際するが、横恋慕した労働者が勝手にラブレターを捏造、騒ぎが起こり交際も破綻した。その後、幾つか話はあったが、結局現在も独身のままである。工場の劇団に属し、コーラスや麻雀を楽しむ日々。自分の人生に後悔してはいない……。服飾バイヤー、スー・ナー(チャオ・タオ)は1982年成都で生まれた。彼女が初めて工場で働く母親の姿を見た時、これまで自分が母親の労働を幾分軽蔑していたことが大きな間違いだと悟る。工場跡地に建つ高級マンションを両親のために買いたいと力強く語るスー・ナー。彼女が外に向けた視線の先には成都の街並みが広がっている……。