古くからカーボ・ヴェルデ諸島出身のアフリカ系移民が多く住む、リスボン北西郊外のフォンタイーニャス地区。ヴェントゥーラは、貧困・ドラッグ・暴力が猛威を振るうこの地に34年間住み続けている移民労働者のひとりであった。しかし、地区開発に伴い、住民たちはカサル・ボバ地区に建てられたばかりの近代的な集合住宅へと強制移住させられている。ヴェントーラの妻は、二階の窓から家具を投げ下ろし、家を出て行ってしまった。ヴェントゥーラも、立ち退きを迫られており、ひとりで新しい部屋を下見に行く。途方に暮れながらもヴェントゥーラは、荒廃した貧民窟と白い壁の集合住宅の間を行き来し、彼自身が「子供たち」と信じるヴァンダやベーテ、レントたちを訪ね歩く。ヴァンダは、苦痛にとらわれながら麻薬中毒治療を続けている。ヴェントゥーラが母親の失踪を告げると、ここはあなたの娘の家と違うと言われる。ヴェントゥーラは愛する妻への手紙を暗誦し、若い労働者たちに伝えていく。「愛しき妻へ。今度会えれば30年は幸せに暮らせるだろう。お前のそばにいれば力も湧いてくる。土産は10万本のタバコと流行のドレスを10着あまり、車も1台。お前が夢見る溶岩の家、心ばかりの花束…」。詩は放浪者から生まれ、そしてヴェントゥーラの旅は続く……。