韓国・江原道の人里離れたとある村。かつては炭鉱業の発展で栄えた土地であったが、今では廃鉱寸前の山を抱え、時代に取り残された場所となっていた。9歳のチェ・ヨンリム（ユ・ヨンミ）は、炭鉱夫の父ヘゴン（チョ・ヨンジン）と軽い精神障害を持つ兄トング（パク・ヒョヌ）の3人で暮らしている。ヨンリムはしっかり者で、一家にとって母親がわりの存在であった。そんなある日、ヘゴンがじん肺症にかかり会社をクビになってしまう。家族に心配をかけまいとするヘゴンであったが、障害退職扱いも受けることができず生活はますます悪化していく。ヘゴンは社宅撤去の補償金でトラックを買い、新しく事業を始めるが、そのトラックで事故を起こし、やけになったヘゴンは昼間から酒を飲む日々が続いた。生活もままならない中、入院して保障を受けようとしても、そのためにはもっと重い病気にかからなくてはならないと病院から告げられる。そんな父を思いやり、ひとり胸を痛めるヨンリム。ある日、酒に酔った父に焼酎を買ってこいと言われたヨンリムは、市内のコンビニエンスストアでラーメンと焼酎を万引きする。逃走したヨンリムは、ピアノ教室の小さな部屋に隠れ、そのまましゃがみこんで寝てしまうのだった。やがて、ヨンリムは家族のために悲壮な決意を固める。まず、こっそりトングを連れ出してバスに乗り、障害者施設に預けた。そして、父が食べるラーメンに、ヨンリムは猫イラズを入れる。幼い少女はそのままバス停に向かい、ひとりバスを待つのであった……。