舞台はモスクワ南東35キロに位置するゴールキ村。レーニン(レオニード・モズゴヴォイ)は1918年8月30日に狙撃され、健康を害していた。その療養を兼ねて彼はこの村で休暇を過ごすようになり、1923年から亡くなる1924年までは定住することになる。映画はレーニンが理性を完全には失っていない1922年夏の一日を描いている。レーニン52歳。6本の白い円柱で飾られた瀟洒な邸宅に暮らすレーニン。ここにはモスクワからの手紙も届かず、電話もかかってこない。革命の指導者は、病人としてあらゆる外界の出来事から隔離されているのだった。隣室では護衛局長がレーニン宛の手紙を検閲し、暖炉で燃やして処分していた。別の隣室には妻(マリーヤ・クズネツォーヴァ)と妹が不安げに暮らしていた。レーニンの秘書である女性は不可解な振る舞いをし、なぜか陽気に笑っている。邸宅全体を奇妙な雰囲気が覆っていた。孤立させられていることを感知し、自由にならないわが身に苛立つレーニン。痙攣の発作を起こし、まだらボケも始まっている。この革命の立役者は、いまや信じられないような境遇に陥っているのだった。そこにモスクワから客人がやってくる。空虚な黒い目の、小悪魔を思わせる風貌の男だ。意味も無く苛立っているその男は一体何のために来たのか良く判らない。不可解な客人とレーニンとの対話が繰り広げられる。その後、庭のあずまやに行く妻とレーニン。しかし、妻は電話で呼び出され、館に戻っていく。やがて一人取り残されたレーニンの、妻を呼ぶ叫び声が庭に響き渡るのだった……。