揃いの水色の制服に身を包み、イスラエルの空港に降り立ったエジプト警察所属のアレキサンドリア警察音楽隊。イスラエルに新しくできたアラブ文化センターでの演奏を頼まれてやってきたのだが、空港に彼らを出迎えに来ている人は誰もいなかった。過去25年間自分達だけでやってきたという自負のある団長トゥフィーク(サッソン・ガーベイ)は、人の手を借りずに目的地へ行こうと、若手団員カーレド(サーレフ・バクリ)に行き方を調べるよう言い付ける。しかし、反抗的でやる気のないカーレドがちゃんと聞かなかったのか、空港の案内係が間違っておしえたのか、バスで向かい降りた先にアラブ文化センターはなかった。一行は、目的地“ペタハ・ティクバ”と名前のよく似た辺境の町“ベイト・ティクバ”に迷い込んでしまったのだ。お金もなく腹をすかせた一行は、とある食堂の女主人ディナ(ロニ・エルカベッツ)の好意で食事をさせてもらうことになる。その上、面倒見のいい彼女は、みんなを泊めようと申し出るのだった。団員は3つのグループに分かれ、食堂、ディナの家、そして食堂の常連イツィクの家で1泊することになる。ディナの家に泊まることになったトゥフィークは、自由奔放な彼女と話が噛み合わず、イツィクの家に泊まることになった3人の団員は、話を盛り上げることもできずに食卓を囲んでいた。そんな彼らの間にあった壁を取り払ってくれたのは、国境を越えて愛される音楽だった……。