IQが高すぎて計測不能という6歳の天才児ヴィトス(ファブリツィオ・ボルサーニ)。ヴィトスを立派なピアニストに育てようと、過大な期待を抱く彼の両親のレオ(ウルス・ユッカー)とヘレン(ジュリカ・ジェンキンス)は、ついにヴィトスを幼稚園ではなく、音楽学校へと通わせることを決意。そんな中、田舎で家具工房を営む祖父(ブルーノ・ガンツ)だけがヴィトスをヴィトス自身として受け入れてくれた。祖父と過ごす時間は、ヴィトスにとってかけがえのないものになっていく。レオの就職で多忙になったヘレンは、ベビーシッターのイザベルを雇う。はじめはイザベルを無視するヴィトスだったが、徐々に心を開いていき、2人して泥酔するまでに。ヘレンはイザベルを解雇するが、イザベルを結婚相手にと心に決めていたヴィトスは、やり場のない怒りをピアノにぶつける。6年後。飛び級制度を利用して12歳で高校生となったヴィトスも、スーツを着てタクシーで学校に通う日々。天才的な知能から、ヴィトスと周囲の人の間には埋めようのない深い溝が広がり、ついにヴィトスは卒業試験を受け、学校を出て行くようにと勧告される。ヴィトスは祖父に普通の人間になりたいと苦しい胸のうちを吐露し、祖父は、決心がつかなければ大事なものを手放してみろと、大胆なアドバイスをする。ピアノの練習をめぐってヘレンとヴィトスとの間に軋轢が生じたある夜、目を覚ましたヘレンはマンションの下に倒れているヴィトスの姿を見つける。ヴィトスに怪我はなかったものの、事故の後遺症で高いIQとピアノの才能を失ってしまう。深い失望を隠せないヘレン。だが、ヴィトスは自分を周囲のプレッシャーから守るため、大きな秘密を抱えていた。ある日祖父の抱えている悩みを知ったヴィトスは、驚くべき行動に出る。イザベルとの再会、レオの失業など、次々と襲いかかる難問を乗り越え、ヴィトスは最終的にある道を選択する……。