アメリカには保険に加入しない市民が4700万人も存在する。WHO(世界保健機構)の調査ランキングで、アメリカの健康保険充実度は37位。映画監督マイケル・ムーアは、アメリカの健康保険制度が悪化していった事情を振り返る。その背景には、利益率アップを目標にする民間保険会社、そして彼らから高額の献金を受け取る政治家たちの姿がある。更に彼らは、公的医療保険制度の導入は社会主義への第一歩だと恐怖を煽り、現在の制度がベストであることを国民に刷り込んだ。保険会社は、自分たちに有利な法律が通るように政治家に大金を注ぎ込む。彼らの「目的」を果たし、都合のいい法律を通した政治家は、保険会社のトップに天下りをして年収2億円以上を稼いでいる。こうして一部の政治家と保険会社のトップが儲かるために、毎日のように一般人は命を落としていく。ムーアはカナダ、イギリス、フランスを訪ね、それぞれの事情を探る。これらの国々では、医療は基本的に国が運営する保険でカバーされ、医師たちは保険にしばられることなく患者の健康のために仕事をこなしている。最後にムーアは、9.11で救命作業のために、健康が損ねられた救命員たちをキューバに連れて行く。なぜなら、キューバ南に位置するグアンタナモ海軍米基地ではアメリカで唯一の無償治療が受けられ、そこに収監されているアルカイダの一味はその恩恵に授かっているからだ。「9.11の英雄に容疑者たちと同じ治療を受けさせてくれ!」と基地に向かいムーアは叫ぶが、返事はない。ムーアは病人である彼らを“敵国”キューバの病院へ連れて行く。すると、そこの医者たちは無償で治療を施してくれた。ムーアは警鐘を鳴らす。利益を第一とする保険会社がすべてを牛耳るアメリカの医療システムはおかしい。だが、一般市民たちは何をすればいいのか。まずは、発想、生きる姿勢から考え始めてみようと、ムーアは観客に呼びかける。