夕暮れのパリの街。ひとりの女(サンドリーヌ・ボネール)が、6階のモニエ医師の診察室へ向かう。女を出迎えた男(ファブリス・ルキーニ)は、「6時に予約を」という彼女に不審な表情を浮かべながらも、オフィスに招き入れる。長椅子に座った彼女は、いきなりすっかり冷え切った夫婦関係を一気に告白する。女は、当惑顔の男の言葉を待つこともなく、次のカウンセリングの予約をして、早々にオフィスから立ち去っていった。実は、彼はモニエ医師とおなじフロアにオフィスを構える税理士のウィリアムだった。彼女はドアを間違えてしまったのだ。次のカウンセリングの時も矢継ぎ早に独白する女に何も言えないウィリアム。その次の回、彼女は姿を現さない。彼女の連絡先をモニエ医師のところで調べるも、何も手がかりを得られない。ある日、女がやってきた。彼女は、ウィリアムが精神科医ではなく税理士である事実を知っていた。ウィリアムの謝罪の言葉を聞かずに罵倒して帰る女。その夜再びウィリアムを訪れた女は、打って変わってすっかり落ち着いていた。そして自らをアンナと名乗り、すべてを承知のうえ、次の”カウンセリング”の約束を取り付けるのだった。回を重ねていくうちに、ふたりの間には打ち解けた空気が流れ始める。挑発なのか、それともゲームの駆け引きなのかわからない態度の女。しかし30年以上変化のない日々を送るウィリアムは、アンナの話に次第に心魅かれてゆく。また別のある日、ウィリアムはアンナに問われるままに答える。いつしか、”医師”と”患者”の立場は渾然一体となっていく二人。ある日ウィリアムは、モニエ医師からから思いがけない指摘を受け、ショックを受けるのだった。