地球の北の果て、<白い惑星>北極を長い冬が襲う。ホッキョクグマが巣籠もりをする時が来た。雪を削って作った巣穴で、メスグマは2頭の子どもを産み落とす。手のひらよりも小さな子グマたち。北極の“長い夜”はふけ、オーロラが天空で舞い踊っている。3月、太陽が戻ってきた。世界は生まれ変わり、母グマと子どもたちは、外界へと跳び出す。母親は、真っ暗闇の中で100日間も何も食べずに、乳を与え続けてきた。光が戻ってくると、北極は生きるための闘いの場へと姿を変える。オスグマが臭いをかぎつけて近づいてきた。彼は子グマをエサとしか思わない。危険を悟った母グマは用心深くその場を離れようとする。厚い氷に覆いつくされた氷原ではメスのタテゴトアザラシが子育てにいそしみ、氷の割れ目ではズキンアザラシのオスが鼻の袋を膨らませて縄張りを主張する。そして、北極に白夜が訪れる。ホッキョクグマたちにとっては、短い狩の季節だ。6月、太陽がゆっくりと北極を温める。海を閉じ込めていた氷の殻が割れ、すさまじい音をたて、氷の塊が積みあがり、衝突し、破壊されていく。シロイルカやカリブーは繁殖期を迎える。多くの生命に輝きをあたえる夏も、ホッキョクグマにとっては大敵だ。見る見るうちに氷が消え、クマの狩場は失われてしまう。地球の温暖化が進む中、早春には氷がとけ、晩秋まで氷が張らない。ほんの僅かの栄養で生き延びる期間が長くなってしまった。9月、太陽が沈み始める。鳥たちの旅立ちが北極に夏の終わりを告げ、海がゆっくりと凍り始める。母グマは子どもたちとの別れの時がきたことを悟る。成長した子グマはたったひとり、不安げに一度だけ振り向き、氷原へと足を踏み出す。