地中海に浮かぶ高級リゾート地であり、人気クラブが軒を連ねるクラバーたちの聖地でもあるスペイン、イビサ島。今夜も、クラブ“マニュミッション”では興奮が最高潮に達していた。“ターンテーブルの申し子”ことフランキー・ワイルド(ポール・ケイ)は、フロアを思いのままにコントロールする神業的プレイで世界中にその名を轟かせるカリスマDJ兼音楽プロデューサーだ。富と名声を意のままにするフランキーの暮らしぶりは、絵に描いたようにセレブなものだ。住まいは島の一等地の豪奢なヴィラ。元モデルの妻ソーニャ(ケイト・マゴワン)とはPVの共演で知り合い、一人息子のキングはジャクソン5時代のマイケル似。セックス、ドラッグ、ロックンロールの日々を楽しむフランキーだが、その生活は長くは続かなかった。聴覚障害を周囲に隠したままプレイに挑んだ彼は、フロアの客たちから総スカンを食い、その夜は最悪のギグとなった。医師からは、右耳の聴力はすでになく、残る左耳も20パーセント程度しか聴こえない、と診断される。さらにレコーディング中のアクシデントで、残されたわずかな聴力も失ってしまった。フランキーはレイヴのうねりから静寂の世界へと叩き落され、ソーニャはキングを連れて他の男と家を出た。どん底の中で自殺まで考えるフランキーだが、読唇術を教える女性教師ペネロペ(ベアトリス・バタルダ)と出会い、彼女に支えられて少しずつ立ち直ろうとする。やがてフランキーは全身で音を感じ取る術を身につけてゆき、復活ライブを開くのだった。