雨の台北。交差点で信号待ちをする人の群れ。その中に無名のバイオリニスト、ジョン(金城武)と、雇われ翻訳家イブ(ジジ・リョン)の姿があった。2人は互いを知らず、その存在に気づくこともない。実は、2人が住む部屋は、壁一枚を隔てたお隣同士だった。でもジョンはアパートの右側から出入りし、出る時は必ず右側へ歩き出す。方やイブはアパートの玄関の左側から入り、出る時は左側へ歩き出す癖があった。だから、彼らは一度も顔を合わせたことがない。そんなふたりがたまたま公園で知り合った。そして、驚くような事実にたどりつく。なんと彼らは、学生時代に一度出会っていたのだ。互いに意識しながらも名前すら聞けずじまい、相手の学生番号だけをいつまでも忘れずにいたふたりは、こうして運命的に再会した。ところがまたしても、運命がいたずらをする。突然の夕立の中、電話番号を交換して慌ただしく別れたふたりは、翌朝になって言葉を失う。電話番号を書いたメモが、雨でにじんで読めなくなっていたのだ。ふたりは手当たり次第に電話をかけるが、ハズレつづき。しかも雨に濡れたせいで、ひどい風邪をこじらせてしまう。たまたま相前後して同じ食堂に電話をかけ、同じ出前を頼んだふたりに、シャオホン(テリー・クワン)が配達に行く。ハンサムなジョンに一目惚れしたシャオホンは、彼が探している女性が隣のイブだとピンときたが、知らんぷりを通す。かたやイブは入院先で、昔自分を追い回していた医師のフー(エドマンド・チェン)に出くわす。同じ頃、ジョンもその病院に入院していたのだが…。イブに好きな人がいることを知ったフーは、探偵を雇ってイブの身辺を探る。その結果、思いがけないことが判明する。イブが写っている写真のどこかに、必ずジョンが写っていることを。フーとシャオホンは、イブとジョンが振り向いてくれない腹いせに、2人を絶対に会わせまいと同盟を結成し、いやがらせを決意する。2人が写りこんでいる写真を焼き増しして、それぞれに匿名で送りつける。会いたい人とこれほどまでにすれちがっていながら、気づくことのできない自分。最後まで会えない運命なのだろうか、と悲嘆に暮れるイブとジョン。やがて、彼らは苦悩を超えてそれぞれの道を歩み出すチャンスを手にする。ジョンは管弦楽団の奏者としてウィーンへ。イブは海外出版社の社員としてアメリカへ。台北を後にする日、ふたりは壁一枚を隔てて、旅の荷物をまとめていた。そのときに、ある奇跡が起こる。