妻と幼い子供たちを養うキッチン・セールスマンのウーヴェ(ウーベ・オクセンクネヒト)は、自分のセールスする機能的なキッチンとは対照的な雑然とした生活を送っていた。ある日、ストレスに耐えかねた妻が子供たちを連れて出てゆき、ウーヴェは広い家にひとり取り残される。混乱した彼は、弟グスタフ夫婦の家に転がり込む。風水カウンセラーのグスタフ(グスタフ・ペーター・ヴェーラー)は、折りしも長年の夢であった日本の禅寺へ修行旅行の準備をしていた。ウーヴェはグスタフに泣きついて、「一緒に連れて行ってくれ」と頼み込む。いわゆる<ミドルエイジ・クライシス=中年期の危機>に陥ってしまったウーヴェは、人生の意味を問い直すため、自分も禅を体験してみようと考えたのだ。日本に到着したものの、ふたりは着いた晩に東京で遊びすぎ、しかも道に迷ってホテルにも戻れず無一文のホームレスに。デパートで万引きしたテントを公園で張って夜露をしのいでいたところ、東京在住のドイツ人女性ぺトラ(ぺトラ・ツィーザー)と出会い、彼女の世話でドイツパブでアルバイトをすることになる。デザイナーになる夢を抱いて異国で生きるぺトラを見て、ふたりは力づけられる。旅費もたまり、グスタフとウーヴェは一路石川県に進む。新幹線から在来線を乗り継いでどうにか曹洞宗の本山・総持寺にたどり着き、僧侶たちに混ざって修行を始める。それは水浴び、座禅、托鉢、境内の掃除、と、ドイツ人であるふたりにとっては未知の体験だった。自分よりも修行に順応してゆくウーヴェを見て、グスタフは子供の頃からずっと兄に感じていたコンプレックスを爆発させる。しかしこのことで、ふたりは初めて本心で会話し合い、これまでにない強い絆を感じるのだった。厳しくも実りの多かった修行が終わり、グスタフとウーヴェは東京に戻ってくる。雑踏に包まれ、これまでになかった穏やかな気分に包まれた兄弟は、再び公園でテントを張り、お経を唱えながら夜を過ごすのだった。