ハンガリーの荒廃した田舎町。ヴァルシュカ・ヤーノシュ(ラルス・ルドルフ)は、天文学に興味のある郵便配達。彼は靴職人の工房に部屋を借り、仕事と家の往復の中、老音楽家エステルの世話をしている。エステルは、18世紀の音楽家ヴェルクマイスターへの批判をテープに口述記録していた。そんなある日、街角に一枚の張り紙が貼られる。“夢のよう!”“自然界の驚異!”“ 世界一巨大なクジラ!”“ゲストスター、プリンス!”――エステル夫人が、風紀を正す運動に協力するようエステルを説得して欲しいとヤーノシュを訪ねてくる。広場に何かが来ているという噂を耳にし、ヤーノシュが広場に向かうと、そこにはトラックを取り囲む数え切れないほどの住人たち。トラックの荷台が開き、乗り込んだ彼が目にしたのは、巨大なクジラだった。不気味に光るクジラの目に魅了されるヤーノシュ。そんなヤーノシュをよそに、街では次々と暴動が起こる。炎が上がり、爆発が起こり、群衆が集まる。彼らは病院に向かうと、患者を次々と襲っていく。ヤーノシュはひとり破壊されつくした街を徘徊し、とうとうヘリコプターに追跡される……。言葉を失ってしまったヤーノシュを見舞うエステル。彼が広場に向かうと、そこにはあのクジラがすべてを見ていたかのように横たわっていた。