1947年の春、開拓村の畑が広がる北海道白糖台地。戦争のショックで口が聞けないまま満州から引き揚げてきた少女・とも子は、山奥の開拓地で芽生えを見せたライヤンツーリー(中国梨の一つ)の木の前で、中国人のインレンと出会う。戦時中、中国から北海道の炭鉱に強制連行され奴隷のように働かされた彼は、仲間とともに脱走しそのまま終戦したことも知らず山奥で逃亡生活を続けていた。ライヤンツーリーは彼が望郷の思いにかられ種を蒔いたものだった。それから10年以上がたった。インレンの歌う中国の子守唄がきっかけとなって言葉を取り戻し、今や高校3年生となっていたとも子は、インレンの行方を探し続けていた。14年に渡る逃亡生活の果て、死ぬ前にもう一度ライヤンツーリーの木を見たいと思ったインレンは、そこで遂にとも子に再会。こうして長い逃亡生活は終わるのだった。