ある夏の夜、江戸鳥越の料亭の板前巳之吉は、二世を誓ったお糸との間を、お糸の義母お源の慾心からせかれたのを怒ってお源とならず者の仙太と争ったはずみでこの二人を殺してしまった。追われる巳之吉はお糸と共に逃げたが、追いつめられて死を覚悟して大川へ身を投げた。巳之吉の幼馴染の下っ引の辰吉が二人を追って来たが、ようやくお糸だけを助け、巳之吉は行方知れずになった。一年経った盂蘭盆の夜、変り果てた巳之吉が、大川の燈籠流しに合掌していたが、ばったりと辰吉に出会い、死んだと思ったお糸が辰吉の女房になっているときいて逆上し、辰吉のいいわけもきかずもみ合ったあげく、くずれて来た材木の下敷になった。辰吉は死んだが、巳之吉は再びのがれ苫舟のなかで気絶しているのを百花園の主孫右衛門に救われ、孫娘おゆきの手厚い看護を受けた。しかしここにも追手が迫ったのでのがれ、川供養の紙片で辰吉の死を知ってその家を訪ねたが、お糸は御家人くずれの相馬権六郎に欺かれて連れ出されていた。巳之吉はそのあとを追ってお糸を救い出し、船小屋に二人がかくれるが、到底逃れられぬ身を悟り、お糸の変らぬ愛情にはげまされて自首して出るのだった。