神戸水上警察署の監視艇二隻、夜目にも白く波を蹴立てて突き進む。それぞれの舳に突っ立ち闇を見透かそうと眼をむいているのは井川、加藤の両担当刑事、沖に怪しげな機帆船が浮かんでいる。これこそ今厳重な監視の裏をかいて神出鬼没の密輸団赤いZ!の乗船である。甲板の上で突然拳銃の音。ウ!と唸って船艙に転がり落ちた男、Zの一人辰吉、撃ったのは烏山。Zの内部でもめごとが起きている。首領の津島派と副頭目烏山の一派が分裂した。この時監視艇のサーチライトがパッと機帆船を照らした。逃げろ!傍らにもやっていたランチが素早く闇の中に姿をくらます。翌朝酒場にブラリと姿を現した二人、津島と腹心の禿六、酒場のマダム三千代は津島に首ッたけ、津島の顔を見て気の好さそうな笑いをした先客がいた。三千代には打込んで通いつめている伴さんである。三千代は近頃心配している、津島という男が判らないのだ。津島も近頃浮かない、妹の事を思っているのだ。戦争に行く前別れたっきり、両方で消息がわからない、ところが実をいうと津島の妹早苗は夫人警察官となって井川刑事と共に赤いZの逮捕に活躍しているのだ、酒場の女に扮した早苗と津島は偶然出会う、驚愕と悲嘆に暮れる二人、津島は覚悟を決めた、麻薬を取扱おうとする烏山一派をやっつけて自分は縛につこう、早苗は職務があった。Zを捕縛せねばならぬ。Zの最後が来た。井川と早苗の前に津島は身を投げ出した。