牧場のお嬢さんである少女さゆりは、幼い時からの夢が実現して、父母代りの兼六叔父さんに許され、牧夫の一郎、二郎、三郎、四郎等に送られて、歌手となるため東京に出た。連絡船の中でクラリネットをもった青年相良丈二に会って好意を抱きながら、心ならずも意地っぱりな態度に出てしまった彼女は、上京してまず作曲家月村浩一を訪ねる。落胆した老ピアニスト月村に尊敬の念と愛情を抱きながら、さゆりは近所の商店街の若者達--弁さんやピー公や信夫、“ペットの透”こと佐野透たちを仲間に、街の楽団アケボノ楽団を結成した。貧しいけれど楽しい日々が過ぎるが、時々会っては口喧嘩してしまう丈二のことだけが、さゆりの心がかりだった。忘れていた音楽家の夢をとりもどし、指導にのり出した月村先生を得て、アケボノ楽団は東京湾一周興安丸に乗って、遊園地設立資金募集をはじめた。そして、彼女等の演奏をみていた東海芸能社・前田五郎左衛門との契約の成立。しかし、彼は実はペテン師だったのだ。落胆しながらも楽団のために闘った一同は、みどり映える湖畔に遊んだ。湖上のボートの中で三たび顔を合せたさゆりと丈二は、やっとお互の気持を理解しあった。丈二の紹介でさゆりは金星劇場のオール・スター・フェスティバル出演のテストを受け、見事に合格した。ところが三島マネージャーが契約を申出たのは、いっしょに出た月村先生と楽団を除いた、さゆりだけだった。失望した月村先生は、さゆりの前途を思って姿を消した。しかし、さゆりと丈二の熱意に動かされ、契約は先生を含む楽団全員に変更された。晴れの舞台の日。一同の努力で探し出された月村先生がタクトを振るうちに、丈二のクラリネットや透のトランペットが響き、さゆりの歌声が劇場全体に美しくこだました。