天保の改革を前に、江戸の物価は鰻登りに上り、なかでも油の値上りは天井知らずだった。そこに目をつけた油問屋の山崎屋は、その買占めを計り、油奉行塩沢と結託して邪魔な油商を次々と取りつぶしていった。武蔵屋の倉庫に火をつけたのもその一つである。武蔵屋とは江戸への道中を共にした間柄の、町火消し「に組」の長次は、事件の探索に乗り出した。折から鳴り渡る鐘の音に、駈けつけた火事場は山崎屋の油倉庫であった。ところが、飛び込んだ長次が蹴倒した油樽は空っぽだった。長次は、翌朝再び焼跡に探りを入れに行った。山崎屋は、長次を料亭に呼び金を握らせようとするが、突返された。そこで、最後の手段と刺客を送った。彼等を素手で叩き返した長次は、武蔵屋へ駈けこむが、すでに武蔵屋は絶命しており、娘お花の姿はなかった。に組に戻った長次は壁の手鍵を取って、山崎屋へ躍り込んだ。たちまち、襖を倒しての乱闘が始まった。長次の活躍に、かどわかされていたお花も救われ、父の仇の止めをさした。--大手門広場に、纏を先頭に並ぶ火消したち。将軍家御覧の前に、裃姿で長次は見事に纏を振った。