信州の林檎園で働く道夫は隣家のお春が好きだった。しかし彼女の父良平と、道夫の母お栄は昔気質で仲が悪かった。お栄のたった一台の織機が、税務署員から差し押えられた。文明評論家谷沢の講演会の夜、お春に心を打ち明けようとした道夫は健太郎の出現にさまたげられた。戦死した兄の命日に東京から嫂の千代が墓参りに来たが、お栄に追い帰された。親の許さぬ結婚をしたからだ。信夫は千代を慰め、励ました。お栄の所に再び税務署員が督促にきた。健太郎は青年会の金を都合してやろうと、三万円貸した谷沢に返済を求めた。翌日谷沢はそのまま姿を消し、偽者であることが判明した。困った健太郎と道夫は材木運びの出稼ぎに出た。道夫はお栄に反対され、置手紙を残して行ったのだ。仕事は激しく、病後の道夫にはつらかった。現場主任の宮下の息子をトロッコの下から救った道夫に、宮下は今まで彼につらく当っていた態度を改めた。その御礼の宴で、道夫は健太郎がお春の婚約者であることを知った。三カ月の仕事は終ったが、道夫は故郷へは帰らず、東京へ発つ決心をした。彼らを出迎えた村人達をよそに、上り列車の窓にもたれた信夫の頬に涙が光り、唇からは思い出の林檎園を想う歌が流れた。