日吉善太郎は不動産会社の社長だが、実権は田所専務の手にあり、社内には不明朗な空気がまんえん。善太郎は学生時代からの親友南雲竜太郎を総務部長に招き社内刷新に協力を仰ぐ。竜太郎は親友の窮状を見兼ねた上、恋人沙恵子にも励まされ、住みなれた九州から上京。入社第一日、「即刻帰れ!」と組合のビラ、加えて代表から吊し上げを喰うが、何かフェアでないものを感じた竜太郎は敢然と実情調査に乗出す。夕方には社長の妹高子の迎えで特に用意したアパートへ。完備した調度類も、総て竜太郎の身を案ずる高子の心遣いである。彼の誠実な態度は、やがて社内に信服者を生み出し、中でも厚子は恋人大間をヤキモキさせる程。その大間も信服者の一人、専務に逆らったため大阪に左遷された岩田を呼び戻すよう進言するなど率先して活躍。その頃、組合から五割賃上げの要求。竜太郎は、二割で食い止められなければ辞職すると重役会で誓うが、要求は竜太郎追出しを計る田所専務の指し金らしい。団体交渉の最中、休息のため、と善太郎は箱根へ雲隠れしてしまう。社員の離反も、あながち専務のせいばかりではないと竜太郎は気付く。賃上げは組合内部の反省も伴い結局二割に落着く。一難去り、沙恵子が東洋不動産の重役をしている叔父文造と訪ねて来るが、田所と大株主持田が最近ここの株を大半買占めているとの情報を提供する。両社合併で日吉一族蹴落しを企んでいるらしい。竜太郎は調査の末、田所が架空帳簿で大金を着服していると知る。竜太郎は持田と会見し、刷新へ協力を懇請。作戦露見と知った持田は、手のひらをかえすように支持を約束した。株主総会の日、田所に代って高子が専務となり、竜太郎も常務に選任。だが、いつか彼を煙たがりだした善太郎は排斥運動を開始する。自らの立場を反省した竜太郎は置手紙を残し、沙恵子と九州へ戻ろうと決心する。しかし発車寸前、高子を始め社員が駈けつけ、復社を懇願。だが竜太郎は、高子を中心に一同の奮起を望みつつ、九州へ去って行った。